中小企業金融円滑化法が1年間延長されることになったが、中小向け貸出しが主体の信用金庫では返済猶予や条件変更が二巡目を迎える5~6月ころから対象企業の選別が始まる可能性が出てきた。当初予定通り企業の事業改善が進んでいるかどうかを個別に見極め、再延長するかどうかを判断するものと見られる。

金融機関が中小企業に貸し付けている融資金の返済条件や条件変更について、中小企業の要望に沿うように金融機関に努力義務を課したのが「中小企業金融円滑化法」。昨年4月から1年間の時限立法として導入されたが、昨年12月にさらに1年間延長されることが決まり、2012年3月末まで適用されることになっている。

 

 昨年円滑化法を適用された中小企業は、今年5~6月ころに返済猶予や金利減免などの再延長をするかどうかリミットを迎え、再延長をする場合は各金融機関に再申請を行うことになるが、各金融機関では再延長を認めるか個別企業ごとに厳しい判断が迫られる。

 

 道内の信用金庫理事長の1人は、「1金融機関だけの取引なら金融機関は厳しい選別をする可能性があるが、複数の金融機関と取引している企業の場合は各金融機関とも足並みを揃えざるを得ないのではないか」と内実を語る。

 

 金融機関には円滑化法の適用で返済猶予や金利減免を受けた企業の事業改善が進んでいるかどうかの、いわゆる目利き力、コンサルティング力の真価が問われることになるが、企業の延命に適用されているとすれば本末転倒。

 

 中小企業向け融資が大半の信用金庫では、再延長で隠れ不良債権が膨らむ場合も出てきそうだ。

 

 前出の理事長はこう語る。

 

「2012年3月期は、円滑化法延長でリスクは高まってくるために信用コストを減らしておかなければならないだろう。このため貸倒引当金の積み増しが必要になる金庫も出てくる。支出面で一番大きいのは人件費を除けば信用コスト。一度で処理できないほど信用コストが膨らむことも懸念され、時間軸を持ちながら引き当てを増やしていく措置が必要になる」

 

 信金業界は、貸出金の減少と金利競争の激化によって収益環境は一段と厳しくなっている。金融円滑化法の延長によって不良債権予備軍への信用コストをどう捻出していくかが問われる1年になりそうだ。

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