阿部氏は、「金融機関には、定量情報(数値化できる情報のこと)である決算書よりも、その背景にある定性情報(数値化できない情報のこと)を見たり感じたりして欲しい。金融機関の担当者は2年ほどで異動するが、新任担当者にはできるだけ工場を見てもらうようにしている。しかし、実際に工場に来る担当者は2割ほど。工場の雰囲気を感じてもらえれば、担当者も当社に賭ける価値が見えてくると思う」と述べた。

 竹内氏は、「定性情報は人によって受け取り方に違いが出る。なぜ違うのかを議論することが大切だ。以前、当行では取引先との交渉履歴がシステム的に蓄積されていなかったが、今は過去の交渉履歴を蓄積しており、それを見てから取引先を訪問するようにしている」と話したうえで、「取引先が必要なことを提供できているか、銀行側の都合が優先していないかを今後3年間かけて3000社でソリューションの提供が適切かどうかを検証していく。いずれにしても取引先のお客を良く知ろうという熱意と聞き上手になることが重要だ」とした。

 小谷氏は、「取引先と親密になることは大事だが、相手が求めているのは金融機関人としての親密さで、その自覚が必要だ。お客と向き合うときに節度や緊張感がないと本当の信頼は得られない」と述べた。さらに、「信用金庫は借り手が協同組織の会員であり出資者。当金庫はこの関係性を活かした取り組みがまだ十分ではない。今後は、この分野を強化することで新しいビジネスモデルを考えていきたい」と語った。

 大庫氏は、「X社のような債務超過の企業に融資できるのかどうかという意見もあるが、それは金融規制の枠組みがどうしても頭をよぎるため。金融庁の森信親長官は、『顧客と共通価値を分かち合うような適正な融資をするべき』と主張しており、今までの(融資の)枠組みにとどまっていると発展性はない。どんどんと財務局や金融庁に融資現場の実態を伝えて欲しい」と訴えていた。

 最後にコーディネーターを務めた齋藤氏は、「感じる、聞く、繋ぐということを端緒にしてコミュニケーションの能力を磨けば、顧客との共通価値創造に結び付いていくことが見えて来た。これは、実は普段から金融機関がやっていることで、そのことをあらためて問い直して活動の連鎖に繋げていくことが重要だ」と締めくくった。

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