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 ――マイナス金利や貸出競争など金融環境は厳しい。道内の信組業界が置かれている経営環境をどう捉えていますか。
 
 林 信組業界は、預金も貸出もここ数年は上積みして伸びていますし、信組には底力があります。ただ金利競争は今も激しい。基本的に金融機関のビジネスモデルは、短期調達の長期運用。その長期運用が20年もの国債で0.40%程度ではいずれどの金融機関も干上がってしまう。融資ではリスクから逃げていたら衰退するし、取れないリスクを取ると破綻してしまう。取るべきリスクと取れないリスクをうまくジャッジできる金融機関は残っていくでしょう。
 メガバンクは海外で収益をあげられますが、マイナス金利と人口減少によるマーケットの縮小の中で業態的に一番厳しくなりそうなのは地方銀行と言われています。我々信組とか小規模の信金は、地べたを這うように姿勢を低くして張り付いて事業展開していけば生きていける業界だと思います。真の底力がありますから、金融庁の言う日本型金融排除の先である企業などに、リスクを取りながら対面営業や訪問営業という信組が常時行っている強みを発揮していけるのではないかと考えています。
 
 信用情報機関のITと信組の対面営業の強みをマッチングさせながらリスクを取っていける余地はまだまだあります。おそらく全ての金融機関もそちらにシフトしてくると思いますが、信組業界として先駆的に実行している塩沢信組や福島県のいわき信組の例もあります。この2信組は、個人ローンの分野で訪問を定期的に繰り返しながら債務者の状況を把握して何かあったらすぐ対応するモデルを確立しており、大いに強みを発揮すると考えます。
 
 ――信組業界は、顔の見える関係で金融仲介機能を発揮しているということですね。
 
 林 いわゆる消費者金融や商工ローンなど個人と法人には以前からそういうニーズがあったということは、現在もそのニーズはあるということ。きちんと顔の見えるような関係を構築して全部は無理にしても1割でも2割でもカバーしていくことができるのが信組ではないでしょうか。やむを得ず生活苦になった方や企業もありますから、そういうところで社会貢献と収益を両立させることができるのではと考えています。
 
 ――道内信用金庫業界では、札幌に進出した地方信金が不動産融資を伸ばしているようです。
 
 林 専用住宅アパートローンは北央信組もそうですが、各信金・信組ともかなり手掛けています。なぜやるかというと、1つには自己資本比率規制の問題があるから。事業性ローンや個人ローンは融資を伸ばせば伸ばすほど自己資本比率が下がる。ところが住宅ローンやアパートローンはリスク評価が35%に軽減されている。また保証協会付きならリスクはゼロです。国債運用もリスクはゼロで、以前は国債運用と住宅ローン、アパートローンと保証付きで融資を伸ばせば、ある程度収益を確保でき自己資本比率も維持できてさらに多少上乗せもできました。
 ところが今は、国債運用が事実上できない状態で事業性融資の評価見直しで保証付き融資は急激に減っています。住宅ローンの分野は金利ダンピングの中で団体信用生命保険を付けるとほとんどマイナス金利状態。国債も保証付きも住宅ローンもダメだと。そうなると唯一、専用住宅アパートローンは、リスクアセットが30%ぐらいである程度の収益が見込めるので伸びているという訳です。
 
 15年に北央信組はアパートローンを70億円実行しましたが、そのうち半分の35億円が新築物件です。建設関係はよく資金が動いていると言えます。人口減少でアパートの供給過剰と言われている中で、アパート向けに融資するわけですから、やはりお客様の経営手腕を良く吟味しなければなりません。アパート経営といっても人によって千差万別で、『こんなところに建てて大丈夫なのか』と思ってもきちんと入居維持しているお客様もいます。そこはやはり経営力の違いですから、そういうところを見ながらジャッジしていくことが肝心です。
 



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