中小零細企業や家族経営の事業所などを主な取引先とする信用組合。道内にある7つの信組の預金量は総額で約6300億円、貸出金の総額は約3500億円で、地域の隅々にまで資金を供給する毛細血管にも似た役割を果たしている。道内7信組で作る一般社団法人北海道信用組合協会会長を務めているのは今年6月、北央信組理事長に就任した林伸幸氏(62)。マイナス金利や業態を超えた金利競争など信組を取り巻く経営環境は厳しい。林会長に信組経営の方向性や成長戦略をインタビューした。15日発売の北方ジャーナル1月号でも詳報する。
IMG_0319《はやし・のぶゆき》…1954年2月生まれ。函館中部高校から77年3月立命館大学卒業、79年9月札幌専売信用組合(現北央信組)入組。2002年12月本店営業部長、04年3月総合企画室室長、08年3月総合企画室統括、09年6月常務理事、13年6月専務理事、16年6月理事長就任、北海道信用組合協会会長就任。

 ――今年6月に北海道信用組合協会(略称・道信協)会長に就任されましたが、任期3年間で何を手掛けますか。
 
 林 昨年、北央信組専務理事の時に全信中協(全国信用組合中央協会)の企画専門部会委員として信組の10年ビジョンを策定しました。その中では3つの相互扶助が謳われています。1つ目は伝統的な資金の相互扶助、2つ目は知恵と創意工夫の相互扶助、3つ目はネットワークによる相互扶助です。これら3つの相互扶助を活かしていこうということになりました。議論の中で出てきたのは、信組には横の連携が少なかったということです。もう少し連携を取った方が良いのでは、という私自身の問題意識もありました。道信協でもお客様同士のビジネスマッチングや組合員同士、さらに、他信組組合員との交流などこれまでよりも一歩踏み込んでいこうと呼びかけたい。
 
 2016年に東京都新宿区の第一勧業信組が地方連携協定を拡大するために新潟県の塩沢信組、糸魚川信組と提携しその後、全国に提携の輪を広げていきました。北央信組は3番目に手を挙げて第一勧信と地方連携協定を結びました。協定の中身は、地域と地域の組合員、職員が良いと思うことなら何でも協力し合おうというもの。塩沢信組の小野澤一成理事長も糸魚川信組の黒石孝理事長も非常にフットワークが軽くて、第一勧信から1月に連携協定の話があってから2月に締結し、2月半ばには早くも第一勧信のロビーで新潟のミニ物産展を開いたほどです。第一勧信とのネットワークを組んでいる信組は、現在全国に15信組。そういった連携関係を道内の信組同士でもできればと願っています。
 
 ――まずは、信組同士で連携協力体制を築こうということですね。
 
 林 道信協では年に何度かの理事長会があり、専務理事会や業務連絡会もありますが、お客様を巻き込んだ連携や人事交流などはしていません。東京の各信組は全信中協に人を出したりしていますが、北央信組でも16年から全国信用協同組合連合会(全信組蓮)札幌支店の職員を受け入れて短期研修を始めました。信組同士の人事交流は全国的にもまだ行われていませんが、私は信組同士でも交流をしていければと思います。
 
 ――連携や人的交流の拡大でビジネスチャンスを掘り起こす狙いもありますね。
 
 林 信組業界は経営的に厳しいところもありますが、優れた特徴を持って展開しているところも多い。そういう良いところを共有できれば、強みになっていくと思う。例えば、岐阜県の飛騨信組はクラウドファンディングの先駆けです。クラウドファンディングは、スモールビジネス支援ということでは信組と相性が良いのかもしれないですね。
 また、釧路信組は地域クラウド交流会というスモールビジネス、マイクロビジネスの事業プレゼンテーションを首長や商工会、地元マスコミを巻き込んで行っています。この間は3回目を開催して成功させています。この地域クラウド交流会は、サイボウズ(東京都中央区)というIT企業の長岡恵美子という方が発案して支援している地域おこしの活性化策。北央信組でも近いうちに指定金融機関である東神楽町、それに東川町と共同で実施したいと考えています。
 
 様々なプレゼン企画は、どこのマチでもやっていますが、地域クラウド交流会は3回継続するところがポイントのようです。あまり費用をかけないで地域、地域で問題意識を持ちながら様々な取り組みをしている方たちにスポットを当てて汲み上げていく。それはまさに信組の地に足のついたビジネスモデルにマッチします。その後の金融支援や経営支援に繋がっていけば一番良い形になると思います。
 



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