ほくほくフィナンシャルグループ(FG)は26日、2年ぶりに札幌で株主総会を開催した。同社は、子会社の北陸銀行と北海道銀行の本店所在地で交互に株主総会を開催しているが、今年は道銀本店がある札幌の順番。会場となった札幌市中央区のホテルポールスター札幌には株主230人が出席、富山市にある北陸銀本社では総会の中継が流れされた。総会では、株主から濃厚な質問が次々と飛び出した。IMG_6289(写真は、会場となったホテルポールスター札幌)

 ほくほくFGの庵(いほり)栄伸(えいしん)社長(北陸銀頭取)が議長を務め、事業報告はナレーションを使わず自ら報告、総会は淡々と進んでいった。一連の報告が終わった後、議長が会場に質問や意見を求めたところ、3人の株主が質問。
 1人目は、「9億円の増益なのに配当はなぜ25銭しか増配にならないのか」、2人目は「537億円の優先株の返済計画と現在の株価の認識」について、3人目は「経営ガバナンス強化をどう考えているか」だった。 
 
 庵議長は、配当を25銭の増配にとどめたことについて、近い将来に自己資本比率の規制強化が行われる見通しの中、従来の自己資本比率から下がるのが確実なため「それに備えた」と返答。ちなみに、ほくほくFGの配当性向の目標は30%だが、2015年3月期は21%台で目標に大きく届かない水準。庵議長の表情には無念さも滲み出ていた。
 
 優先株は配当が1株15円で普通株4円25銭の3・5倍にものぼる。優先株537億円の配当原資だけで8億円。同社は公的資金などを着々と返済してきたが、最後に残ったのが、道銀が1999年に道内経済界などを引受先として発行したこの優先株だ。配当負担は重く普通株との配当差も大きいため、そろそろ返済時期が来ているという考えは一般株主の共通認識。
 
 庵議長は、優先株の買い入れ消却をする方向を示したうえで、「537億円は自己資本比率の1%に相当する大切な資本。償却できるように利益を着実に積み上げていきたい」と述べるにとどめ、「現時点で具体的な返済計画はない」と断言、事実上の先送りを明らかにした。
 
 続いて240円から300円を行ったり来たりの株価について、「当社の1株当たりの純資産は380円なのでそれより低い株価は残念」と答え、「地銀の株価は1株当たりの純資産を下回っているところが殆ど。金利低下や利ザヤ縮小で投資家が銀行経営の先行きに厳しい見方をしているのだろう」と甘受せざるを得ない認識を示した。最後に「金利環境が変われば投資家の見方も一変するのではないか」と述べた。
 
 3人目の質問に対して、「これまでは社外取締役1人、社外監査役3人の体制で社外の意見を取り入れたガバナンスを進めてきたが、社外監査役は取締役会の議決権がないため議決権のある社外取締役を増やす方向で検討してきた」と語り、今回、社外取締役を1人増員して2人に、社外監査役は逆に1人減らして2人にする1増1減でガバナンス強化に努める考えを表明した。
 
 株主総会での質問とカウントされるのは会場となった札幌での3人だけだが、富山会場に集まった株主にも発言の機会が設けられ2人が①預金量の割には利益が少ないのは経営者、行員の能力がないからか?②利ザヤが少ない③地番再編の考え方――について庵議長の考えを聞く場面があった。
 
 庵議長は、15年3月期の株主資本利益率や総資本利益率は金融機関の平均値で「利益水準が少ないわけではない」と釈明。「2年前まで公的資金の返済のため自己資本のバランスを見ながら有価証券運用を進めてきた。自己資本で他行に後れを取った分、積極投資が少なく利益水準が低かったのは否めない。今後は慎重に有価証券運用を拡大して利益水準をさらに高めたい」と答え、能力不足を否定していた。
 
 また、利ザヤに関して、15年3月期は前期より0・08ポイント下がり50億円近い減収要因になったと示し、16年3月期も0・06ポイント下がる見通しのため「貸出しボリュームを増やし、有価証券投資の多様化を進め収益の底上げをしたい」と答えた。
銀行再編が全国的に進み始めたことについては、「当行は全国4位の規模でこれ以上大きくするつもりはないが、人口減少などが続くので研究は進める」とするにとどめた。
 総会の開催時間そのものは37分間と短かったものの、その後の富山会場との質疑や新旧役員の挨拶などを含めると54分間だった。 


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