北海道財務局は6日、札幌第一合同庁舎2階会議室で「平成26年度地域密着型金融に関するシンポジウム」を開催、道内金融関係者など約150人が出席した。人口減少が進む北海道で地域金融機関がどう舵取りを進めて行けば良いのか、講演やパネルディスカッションで事例や方向性が示された。(写真は、地域金融機関に求められる役割について話し合われたパネルディスカッション)IMG_3419
 
 最初に小磯修二北大公共政策大学院特任教授が、『北海道が輝くために~人口減少下における地域戦略を考える』をテーマに講演。小磯氏は、道産米の道内消費割合が1997年の37%から2013年には91%にまで上昇したことを例にとり、「道内消費が向上したことで465億円が道内に還元するようになった。コメの品種改良、農業基盤整備、コメのランキングなどによる作り手の競争意識などの効果によるもので、道民は美味しいから食べるようになった。他にも手袋などももっと北海道で生産しても良いものがある。こうした域内でカネを回す仕組みを考えるのが大事だ」と指摘した。
 
 続いて地域経済活性化支援機構(REVIC)の鈴木学常務が講演、「地域企業の事業承継、転廃業支援、再チャレンジ実現などをサポートしているが、地域にはカスタムメイドの支援が必要だということを痛感している。地域密着型金融を実践している金融機関とタイアップしてやって行かないとうまくいかない」と述べた。
 
 講演の後、『北海道の将来展望と地域金融機関に求められる役割』をテーマにパネルディスカッションが行われた。コーディネーターは小樽商大大学院商学研究科アントレプレナーシップ専攻の齋藤一朗教授が務め、パネリストには「フラノマルシェ」の西本伸顕社長、北洋銀行常務執行役員の塚見孝成地域支援部長、旭川信用金庫の荒山恭一地域振興部長の3氏が登壇した。
 
 地域活性化の成功事例として紹介された「フラノマルシェ」。2010年にオープンし累計350万人が訪れ、今年も80万人の来場を見込む。食と農を中心とした中心市街地活性化策の典型。それを創りあげた西本氏は、「フラノマルシェのために北洋銀、道銀、旭川信金が300万円ずつ出資してくれ応援団になってくれたことが大きかった。金融機関の各支店長と日ごろのインフォーマルな部分での付き合いがあったことも下地になって、我々のマルシェ構想にかける思いが伝わり融資ではなく出資というリスクマネーの提供に繋がった」と語った。
 
 塚見氏は、「フラノマルシェの出資に応じたころは、金融機関が事業に出資するのはそう簡単ではなかった。西本社長の地域活性化に賭ける思いと緻密な事業計画があったからこそ金融機関を巻き込んで成功した事例だ。今の北海道にとってこうした事案が他にも必要だ」とアピールした。
 
 荒山氏は、「フルノマルシェもそうだが、創業・起業後も経営をサポートしていくことが必要。当金庫は旭川商工会議所や商工会、市など6つの機関と連携して様々な観点から課題解決に向けたフォローアップをしていく体制を整えている」と地域金融機関としてきめ細かな体制を整えていることを強調した。

 齋藤氏は、「目利きはリレーションシップバンキング(地域密着型金融)のキーワードだが、目利きの最たるものは人を見る力。地域のリーダーを地域金融機関が発掘して応援していく中から地域活性化の芽が出てくるのだろう」と締めくくった。


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