SATO社会保険労務士法人(札幌市)などSATOグループは5日、札幌市内のキャリアバンクセミナールームで湊総合法律事務所(東京)の湊信明弁護士を招いたオープンセミナーを開いた。テーマは、『実例に基づく債権回収のポイント』。金融円滑化法の期限切れで企業の売掛金などが回収できない場合に、弁護士を利用せずに対処する方法など企業の法務コストを抑える効果的回収法のポイントを説明した。企業の営業担当者など約60人が参加した。(写真は、講演する湊信明弁護士)
 
 湊弁護士は、300万円を超えるような取り引きの場合には、ネットで出来る信用調査はすべてやるべきだと述べ、登記情報提供サービスでの商業登記簿や不動産登記簿の確認、フェイスブックを閲覧して口コミの評判なども事前にチェックすることが必要とした。そのうえで、「裁判を起こしても契約書がないと負けてしまう。契約書は当事者間の行動予定表と敷居を下げて考え、会話をそのまま書面にすれば良いだけ。また、公証役場で公正証書を作れば裁判を経なくても強制執行でき数千円で売掛金を差し押さえられる」と語った。
 
 公証役場は、定年を迎えた裁判官の再就職先場所でもあり、抜けている文言などを丁寧に教えてくれるので企業の担当者にとっては使い勝手の良いところと湊弁護士は利用を促していた。
 
 契約書や公正証書を取り交わすことができなければ、電話の録音やメールのやり取りも証拠として使える。「電話の録音では、ポイントの会話を逃してしまう場合もあるが、その時に威力を発揮するのが『タカコム』という装置。逃したと思ってボタンを押すと遡って最初から録音されるので私も重宝している」と紹介していた。
 
 契約通りに債権が回収できない時には電話やメールでの請求を行い、その際の録音やメールデータは証拠になるほか、催告書をネットの電子内容証明サービスで送れば郵便局で出すよりもずっと簡単で効果もあるとした。
 
 それでも回収できなければ裁判所を使うが、民事調停を行うか、60万円以下の金銭支払いなら簡易裁判所を使うのが良いとし、「簡易裁判所は簡単で早いし安い。簡裁を使うことで企業の学びにもなるし法務コストへ減らせる」と述べた。
 
 湊弁護士は、「140万円を超える事件や建築紛争、知的財産権紛争、医療事故など専門的な事件は弁護士に依頼した方が良い。しかし、通常起こるトラブルのほとんどは請求額140万円以下だから、こういう事件は企業が自分たちで手掛けてみてはどうか」と勧めた。
 
 講演後には参加者から「ルーティン営業で契約書がない場合はどうしたら良いか」や「約束手形を受け取る場合は1通が良いか2通が良いか」など具体的な質問も出ていた。


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