北海道新聞社と北海道商工会議所連合会、札幌商工会議所の主催によるフォーラム『北から変える日本の未来』が30日、札幌市中央区の道新ホールで行われた。東北復興と3年後の北海道新幹線新函館開業で東北と北海道の結びつきはより密接になり、新たな経済圏が生まれると期待されている。安倍政権発足で成長期待が高まる中、未来をどうデザインし課題をどう克服していくか――東北と北海道の経済人たちが討論した。会場は定員700人の座席がほぼ埋まり、景気回復への期待感が大きいことが窺えた。(写真は、フォーラムのパネルディスカッション)
 
 基調講演は、安倍政権のブレーンで内閣官房参与を務める藤井聡京大工学部教授が持論の公共投資による列島強靭化について話した。
安倍政権発足とともに“国土強靭化の男”として一躍スポットライト浴びることになった藤井氏は、異端の泰斗のような語り口調ながら芯になっている考え方は至ってノーマル。曰く、「10年以内に首都直下地震が来るのを覚悟して対策を取るのが大人の振る舞い」、「首都機能移転は昔の議論。今は国土分散化が強靭な日本を作るのが要で、分散化を促すために新幹線は一番重要」など。
 
 藤井氏は、日本を4つの大きな都市圏にしてネットワーク化すべきとして、「北方・大交流圏」「北陸羽越・大交流圏」「中国四国・大交流圏」「九州・大交流圏」の整備を進め、首都圏エリア、震災復興・集中投資エリアとともに国土分散化を図るべきと訴えた。
 
 大交流圏の実現には新幹線が何としても必要だと強調、「北海道は衰退していると言われるが、100年のスパンで北海道や日本がどうなるかを考えてビジョンを共有したうえで“根性”を出せば物事はなる。一番いけないのは、『まぁいいか』とあきらめてしまうことだ。やろうと思って行動に移せば未来は変えられる」と背中を押す力強い発言を繰り返していた。
 
 続いて行われたフォーラムには、藤井氏のほか志賀秀一東北地域環境研究室代表、阿部泰浩阿部長商店社長(気仙沼)、佐藤祐幸佐藤木材会長(函館)に加えて高向巖道商連会頭が出席、東北・北海道の連携策や新函館(仮称)開業効果をどう活かしていくかなどについて討論した。
 
 阿部社長は、「三陸と北海道はサンマなど水産物でライバル関係だが、互いに協業してブランドを作り首都圏などの消費者に付加価値を付けて提供する取り組みを始めている」と語った。
 
 佐藤会長は、東北に木材プレカット工場を持ち昨年9月には北上市に工場を作ったことを紹介、「東北は南部藩と津軽藩の名残があるように互いに見えない壁があるが、他から来た人にはとても優しい。北海道と東北は互いに補完できる良い関係を構築できる素地がある」と述べた。
 
 志賀代表は、「3年後の北海道新幹線開業で両地域が観光客のパイを奪い合うのではなくお互いが地域に自信を持って協調することが大切。囲い込めはダメ」と訴えた。志賀氏は、2014年度に金沢まで新幹線が伸びると東京の新幹線ホームの数が限られているために東北新幹線の本数が減らされることも有り得るとし、東北と北海道は一体になって次のステージに向けた取り組みを強める必要があるとした。
 
 高向会頭は、新幹線札幌延伸の大きな力になったのが東北の応援だったことを強調し「東北の人は北海道をとても身近に感じている。函館開業から札幌まで延伸になれば人、モノ、ビジネスの交流がより活発になる。まずは3年後の函館延伸で経済効果が生まれるようにしなければならない」と話した。
 


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