キャリアバンクの佐藤良雄社長は、札幌証券取引所が開いた「市場改革セミナー」で『本音で語る上場の意味と価値』をテーマに講演した。2000年に札証アンビシャス市場が創設されてその第1号上場会社となった同社は、4年半後には札証の本則市場へ歩を進めている。佐藤社長はなぜ上場を目指し、上場後はどんなメリットを享受してきたのか。参加した約80人を前に訴えたかけた中身を抜粋して2回に分けて掲載する。(写真は、佐藤良雄社長)

 
 『人材派遣のキャリアバンクは、1987年の設立で今期は26年目。アンビシャス市場に上場したのは、2001年、設立13年半目だった。その4年半後には札証本則市場へ上場した。上場時の売上げは5億5000万円だったが、現在の売上げ規模は当時の10倍になっている。私はキャリアバンク以外にもう1社アンビシャスに上場させた。97年に設立した給与計算のアウトソーシング会社エコミックがそれで、2006年に創業9年目にして上場した』
 
『上場のきっかけは、30歳の時から入っている初代会の存在が大きい。創業経営者で作る異業種交流会で当時から2ヵ月に1度集まって情報交換や勉強会を行っていた。その初代会メンバーだった進学会の平井睦雄さんが当時の店頭公開市場に1988年に公開することになった。当時から、初代会メンバーはあまり仲が良くない。単なる仲良しクラブではなかったからずっと続いてきた面はあるが、平井さんの上場を知ってみんなが驚き、「平井さんに負けてたまるか」とメンバー全員が思った訳です』
 
『平井さんに触発されたことや公開ブームということも重なって、初代会メンバーの多くは上場した。介護関連で初の上場をしたジャパンケアサービスの対馬徳昭さん、土屋ホームと土屋ツーパイホームの2社を上場させた土屋公三さん、上場していなくてもタナカメディカルグループの田中良治さんや税理士法人池脇会計事務所の池脇昭二さんのようにその業界で道内トップバッターになった人、政界に出て今回厚生労働大臣になった三井辨雄さんのような人もいる』
 
『初代会メンバーの出世頭はニトリの似鳥昭雄さんだが、初代会から東証1部に行ったのは3人いて、似鳥さん、平井さん、それにアインファーマシーズの大谷喜一さん。創業者で東証1部に行くのは類い稀なる能力。札証へは努力すれば上場できるが、東証へは努力だけでは行けない』
 
『初代会メンバーのうち上場したものの3社は倒産している。カブトデコム、モリショー、はるやまチェーンの3社で、カブトデコムは倒産していないものの実体的には企業活動をしていないので拓銀とともに華々しく散ったと言えるだろう。このように上場して必ずしも成功することにはならない。しかし、勝ち抜いているところは、初代会以外でもツルハやアークスのように上場して資金調達して大きく成長している。もちろん上場しないと立派な会社にならないということではないが、成長していくには、上場が重要な選択肢の一つになるのは確かだ』
 
『上場を目指すには経営者環境というものがとても大事になる。モチベーションを高く保つためにもベクトルが同じ方向の経営者同士と近づいて付き合っていくことが不可欠。単独でなんでもやろうと思わない方が良い。経営者は思い込みが強くて間違うことも多いものだ。ベクトルの合った経営者と仲間となることでそうした面がカバーできるし、何より上場を目指す意欲が研ぎ澄まされていくからだ』

後半は、上場メリツトなどについて紹介する。

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