札幌信用金庫の経済講演会が17日、札幌市内の東京ドームホテル札幌で行われ、講師の藤巻健史元モルガン銀行東京支店長が「日本経済の展望」と題して講演した。藤巻氏は、ギリシャのユーロ離脱が取り沙汰されている中でユーロの崩壊は10年以内に起こる可能性が高いことや、日本はマーケット発の財政破綻に晒されて急激なインフレが起こり、それによって財政赤字は解消。破綻した3~5年後には円安になって経済は急回復するというハードランディングのシナリオを約300人の聴衆に訴えかけた。
 
 藤巻氏は、ユーロの発足時から「この制度は続かない」と思っていたという。「ユーロは、地域の固定相場制。固定相場になったら中央銀行の金利の調整ができないことを意味し、いつかは崩壊することが避けられない。ギリシャ危機はもともと難しいユーロ圏で起きた金融危機で、10年後にはユーロは崩壊しているだろう」と語った。
 
 もっとも、ギリシャが再選挙でユーロ離脱を決めたらハイパーインフレでとんでもないことになるため、それを他山の石とするイタリアやスペインなどは緊縮財政を続け、危機の連鎖には繋がらないという見方も示した。
 
「ギリシャの次は同じユーロ圏ではなく、日本の危機になるかも知れない。“騒がれているから大変”だとか、“騒がれていないから大丈夫”ということにはならない」と日本の財政破綻状態にいつスポットが当たるかは読めないとした。
 
 藤巻氏は1000兆円に迫る日本の借金を解消する方法はハードランディングしかないと見る。
 
「解決方法は大増税しかない。それは消費増税などではなくインフレ税とも言える形式でしか返せない」と訴える。つまり、インフレで国民の富を国が持っていくしか方策はないと指摘、「いつかはインフレにしないとこの国は持たない」と持論を展開。
 
「インフレは逆進性が強く、民主党政権が政策としてインフレを取ることは無理。そうすると、マーケットがインフレを作ることになるだろう」と述べ、マーケット発のインフレは国債入札の未達という現象で発火し、日本銀行の国債引き受けという禁じ手を促し、日本のマーケットはジ・エンドという最悪パターンだ。
 
 藤巻氏は、このシナリオを下に自身の資産を運用していることを紹介、インフレから資産を守る方法をこう伝授した。
 
「私は金融機関から借金をしてマンション投資をしている。インフレになると、借金は楽になるし資産も値上がりするからだ。しかし、投資マンションの借主が家賃を払えなくなるかもしれない。そうなると、私も借り入れの支払いができなくなって金融機関にそのマンションを担保として取られてしまう。それをヘッジするために外貨建ての資産運用をしている。インフレで円安になることは必至なので外貨建ての運用は個人が生き延びていくために必要なヘッジ策だ」
 
 マーケット発のインフレは、日本を窮地に追い込む最悪のシナリオだが、藤巻氏はその可能性が高いという。「日本がインフレで国の借金を帳消しにしたら、日本の国自体がグシャとなるが、ハードランディング後の3~5年先は、円安になって日本は世界の工場とも言える立場になるだろう」と語った。
 
 韓国が通貨危機を経て競争力を回復してきたのはひとえにウォン安の恩恵だとし、円安になれば日本経済は復活の糸口を掴むことになるとしインフレという劇薬で副作用を伴いながらも敗戦後に希望を見出すしかないところまで来ていることに警鐘を鳴らしていた。

 


この記事は参考になりましたか?