IT関連企業のデジタルガレージ(本社・東京都渋谷区)と北海道新聞社(同・札幌市中央区)は、一次産業や観光、豊かな自然など北海道の資産を生かして道内で起業する人たちを発掘・育成する取り組みを始めた。首都圏や海外を拠点に2010年からデジタルガレージが展開している「オープンネットワークラボ」の地方展開第1弾。20日には、北海道での取り組み開始を記念して、札幌市北区の国立大学法人北海道大学工学部フロンティア応用科学研究棟レクチャーホールでパネルディスカッションなどが行われた。IMG_2681(写真は、オンラボ北海道を紹介するデジタルガレージの林郁代表取締役)
IMG_2691(写真は、オンラボ北海道の始動を記念して行われたパネルディスカッション)

「オープンネットワークラボ(略称・オンラボ)」は、革新的なアイデアや技術を持つスタートアップ起業家を発掘して育成、世界的企業へと発展していく種を育てる取り組み。アクセラレータープログラムと名付けられた仕組みを使って、ワーキングスペースや資金の提供、投資家とのマッチング、メンターと名付けられた相談者のアドバイス、起業家同士の交流会などを行い、短期間で事業を磨いて成長機会を提供する。

 こうした「オンラボ」の北海道版が始まるのに合わせて、20日にイベントが行われた。斜里郡小清水町出身でデジタルガレージの林郁(かおる)代表取締役が事業紹介をした後、「オンラボ北海道」のメンターになる4人が参加して記念のパネルディスカッションも行われた。 

 はこだて未来大学システム情報科学部の松原仁教授は、学生たちの状況について「卒業生の3分の2は首都圏、3分の1は札幌で就職して函館には残らない。真面目で良い子で素直だが、スタートアップをしようという学生はほとんどいない。オンラボ北海道で『スタートアップも選択肢のひとつ』ということを学生たちに提示できればと思う」と話した。

 北大工学部調和系工学研究室の川村秀憲教授は、「北海道はフロンティア、ボーイズ・ビー・アンビシャスの地と言われるが、学生たちは決められたことをきっちりとやる傾向が強く、なかなか冒険をしない。それはスタートアップの情報が少ないからで、情報が多くなっていけばスタートアップにも学生たちは関心を持つのではないか。オンラボ北海道が始動していけば、少しずつ学生たちも変わっていくだろう」と述べた。

 クリプトン・フューチャー・メディアの伊藤博之代表取締役(No Maps実行委員長)は、「スタートアップは、面白いことをしたい、好奇心を刺激するなどわくわくする気持ちが原動力。私は1995年に起業ブームもなく支援する人もいない中で、ただわくわくする気持ちだけで起業した。オンラボ北海道はそうした気持ちを確信に変えていく役目があるのでは」と語った。

 また、ファームノートの小林晋也代表取締役は、「起業家は、間違いを正しながら前に進むことが一番重要だ。自己中心で事業を進めていくことがやがて他己中心になっていくことが成長するということ。スタートアップはクリエイティブなことであり、不安は乗り越えられるという先例や同じ志を持った仲間との交流が鍵になる。オンラボ北海道が、そういう場になることを期待したい」と強調していた。

 オンラボ北海道では、20日から5月21日まで公式ホームページで国籍や年齢、性別を問わず北海道の資産を生かし北海道で起業または起業しようとしている人のビジネスプランを募集している。6月中旬にアクセラレータープログラムに採択するチームを決定し、9月末の3ヵ月間で支援策を実行、10月にはベンチャーキャピタルや金融機関などにプレゼンテーションを行う予定になっている。応募は公式ホームページ(https://onlab-hokkaido.jp/)から。



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