新しい価値や文化、社会の創出を目指す「No Maps」が5日から札幌市内の各会場で始まっている。11日にはAI(人工知能)に関連して「農業、漁業、産業、観光そしてAI」をテーマにしたパネルディスカッションが北4西5のアスティ45のACU―Aで行われた。そこに登壇したのが、ファームノートホールディングス(本社・帯広市)の小林晋也代表取締役。酪農・畜産向けクラウドサービスに特化したITベンチャーを率いる小林氏が語った北海道への思いを抜粋して紹介する。20171011_145056(写真は、「農業、漁業、産業、観光そしてAI」をテーマにしたパネルディスカッション)

「37年間、道民として帯広市に住んでいるが、僕は北海道が嫌い。なぜかというと全然前向きでないし、誰もチャレンジしないから。産業が衰退しているのに、誰も手を出さない。それはおかしいと思う」

「人間の大前提に、“人は知らないことは知らない”があると思う。知らないことを知らないから何もしない。知ったら何かやらなければとなると思う。『知らないことは知らないでいい』という現状では、産業などは興らないし改善などもない。知らないことを知る努力からスタートして、知ったことを実現することが産業を生み出す前提ではないかと思う」

「自分の住んでいる地域に勢いがあって、技術面で世界の中心になるような場所だったらきっと好きになるだろうと、今、当社の事業に真剣に取り組んでおり、技術面で世界の中心地域になりたいと思っている」

「はこだて未来大学の松原仁教授は、『北海道はデータだらけ』と言われだが、非常に共感している。実際、農業は酪農だけでも北海道は51%の生乳生産をしており、北海道の酪農技術は世界レベル。畑も広くてアメリカ型の大規模農業を実践しており、生産性の高い農業は既に北海道で行われている。国の支援も多い、そこでデータを入手すれば世界と戦う技術をつくっていくことができる。こんな恵まれた場所はないのではないかと思っている」

「北海道農業は、既に世界と同等レベルにあると思うので、このデータを使って製品化していけば、世界と戦っていけると僕は信じている。地域でふと隣を見てみたら、世界と戦えそうな題材がたくさんあって、それに真剣に取り組んだら世界に通用する技術が北海道から生まれるのではないかと信じている。かなり現実的だと思っている」

「当社の牛の発情を見つけるセンサーは、世界各国のセンサーと比較しても精度は世界ナンバーワン。なぜかというとクラウドに人工知能があるから。大量のデータを集めて、その中からどんどん精度を上げて行く。従来型のセンサーが出してくる予測に比べて我々の方が精度が高いのは当然だ」

「実は、隣にある題材とテクノロジーを結び付けるだけで新しい可能性が生まれる。こんなことは、やろうと思えば誰でもできることだ。技術と課題を結び付ければ、ソリューションは生まれる。誰が早くやるかが重要で、この北海道でイノベーションが起きないのはなぜだろうと思っている」

「この会場でビットコインを使っている人はほとんどいなかったが、あんな簡単な最新テクノロジーは誰でも使えるので、そういうことに触れながら自分の感性を磨いてどんどん先に進んでいく人が北海道に増えてくれば良い。データはたくさんあるし、産業としての基盤も大きなものがあるので、十分勝負になると思う。水産や農業など、人間の生活に根付いている分野の課題を解決していくことが大事」

「当社は、帯広に開発拠点があるが、技術者たちは東京から引っ越してきている。当社以外でも数千万人が見る動画のデータ基盤を作っている人がいたり、アルゴリズムを創る人も帯広にいる。彼らの隣には牧場があるから、課題をスピードよく解決できる。地方に優秀なエンジニアを引き込むことが非常に重要だ。当社はデータ解析に一番投資をして、農業の頭脳を作るため帯広に優秀なエンジニアをどんどん増やしたい。そうすればデータをどう集めて解析するかというシンプルな話からイノベーションが生まれてくるだろう」(この稿終わり)


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