札幌市内で9日に行われた「空港運営戦略フォーラム」の詳細をお届けする5回目は、民営化で先行する仙台国際空港・岩井卓也社長の講演からトピックスを紹介する。道内7空港の一体民営化と比べて規模の小さいコンセッションだが、「東北の空から世界の空へ」のキャッチフレーズは北海道の目指す方向と同じ。2016年7月から事業をスタートさせた仙台国際空港の現況はどんなものか。仙台国際空港は東京急行電鉄、前田建設、豊田通商などが出資。IMG_7759(写真は、講演する仙台国際空港の岩井卓也社長)

「今年4月から着陸料など空港使用料を新料金体系に変えた。これまでは最大重量で料金が決まっていたが、エアラインには良い時も悪い時もある。私たちはエアラインのリスクをシェアしようと旅客数に応じた変動料金制を主軸にすることにした。就航エアラインは10数社あるが、いずれも歓迎してもらっておりスムーズに変えることができた」

「エアポートセールスでは“掴み”が大事なので、東北の魅力が詰まった4枚の写真を使ってセールスしている。実は4枚とも仙台空港のある宮城県にある場所ではない。東北の空を世界の空にというキャッチフレーズを使っているので、結果的に4枚を選ぶ中で地元が入らなかった」

「地域の皆さんと一緒にセールスや陳情を実施している。東北経済連合会や6県の商工会議所、東北観光推進機構、日本旅行業協会東北支部などが集まって一つのエアラインを訪問して商談している。1年間で一緒にできるようになった。観光はプレーヤーが多く裾野が広い。空港会社1人でできるとは思っていない。皆さんと一緒にやるのが私たちのスタイルだ」

「空港会社は、日常的にエアラインとコミュニケーションを取っているので、エアラインや利用客から見た東北の認知度などが客観的にわかる。もちろん空港使用料や最適な離着陸時間などが分かっており、地域の皆さんと一緒にプロモーションに行くことはとても意義があることだと思う」

「役所との連携も様々に取り組んでいる。宮城県では仙台空港から輸出貨物を増やすために実施している事業を受託、山形県ともインバウンドプロモーション事業を受託している。どの県の資本も入っていない純粋民間会社なので、自治体との付き合いにおいて自由度が高いのも特徴だ」

「2次交通に関して言えば、空港直行バスは仙台空港には一つもなかった。空港アクセス鉄道が10年前に開通し宮城県がバスの補助金を切ったら全部なくなった。私たちは地域のバス会社を回って1年間でネットワークを構築、4時間くらい走るルートも確立できた。思ったよりも早く空港直結のネットワークができたと喜んでいる」

「とはいうものの、まだまだ乗車率が低く各バス会社は採算ベースに乗っていない。粘り強くお手伝いをして1日も早く採算ベースに乗るよう協力したい」

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