札幌商工会議所の第36期第1回臨時議員総会が11月1日、札幌市中央区の札幌グランドホテルで開催された。127人の商議所議員が参加し、退任する高向巌会頭(77)の後任として岩田圭剛新会頭(63、岩田地崎建設社長)を正式に選任した。地場建設業のトップが札商会頭に就任するのは1994年11月から2001年11月まで務めた伊藤義郎氏(伊藤組土建社長=当時、現取締役名誉会長)以来15年ぶり。高向氏は札商の名誉会頭に就任した。伊藤氏も引き続き名誉会頭を務める。IMG_9584(写真は、新会頭に就任した岩田圭剛氏)

 議員総会で岩田新会頭は、新任副会頭に紫藤正行・大黒自工代表取締役(67)と柴田龍・北洋銀行副頭取(59)を指名するとともに、留任する副会頭として星野恭亮・旭イノベックス社長(71)、似鳥昭雄・ニトリホールディングス社長(72)、大槻博・北海道ガス社長(67)、勝木紀昭・北海道エネルギー社長(63)をそれぞれ指名、議員の拍手による同意で正式に副会頭も選任された。また、専務理事は荒木啓文氏(67)が留任することになった。いずれも任期は3年間。
 
 岩田会頭は、就任挨拶で高向前会頭が5期13年に亘って積み上げた実績を基礎に、札幌、北海道の活力向上に努力する決意を示し、スローガンとして『パワーアップ!札幌』を提示。札幌がリーダーシップを発揮して北海道全体の活力を導いていくことを強調した。
 以下、岩田会頭の挨拶を紹介する。 
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 今後3年間の基本方針は、『パワーアップ!札幌』をスローガンに、札幌の元気で北海道経済を牽引することだ。そのために4つの視点から事業を展開する。
 1つ目は『地域活力向上に向けて挑む』。強みのある食、観光はもとより、ものづくり産業や札商が昨年末にまとめた「さっぽろ成長戦略」に掲げた先端医療など成長分野を中心とした産業おこしにも取り組む。人口減少の中で経済成長を維持していくために生産性の向上は不可欠。新たに設置する「生産性向上委員会」でIoTやAIなどの中小企業への利用を進めたい。
 
 2つ目は『地域を築く・盛り上げる』。魅力ある札幌の都市形成に向け、民間推進母体としての役割をしっかり果たす。高向会頭が先頭に立って進めてきた北海道新幹線の札幌延伸を1日も早く実現し、開業後にはその効果を全域に広げていくための2次交通の整備をハード、ソフト両面で進める。また、駅周辺整備、都心アクセス道の整備、丘珠空港の機能強化なども今から戦略的に進めていく。
 冬季オリンピック、パラリンピックの招致実現にも取り組む。札幌市では8日に開催概要計画をJOCへ提出する予定だ。オリ・パラはスポーツイベントということだけでなく、有形無形の計り知れない効果を札幌にもたらし、魅力ある都市に札幌が再び生まれ変わる格好の機会になると考えている。  

 3つ目は『挑戦する企業を支え成長に導く』。商工会議所の最大の使命は、地域経済を支えている中小企業の企業努力を支援、中小企業の振興を通して地域社会の発展に寄与することだ。札商は昨年11月に国から「経営発達支援計画」の認可を受けている。この計画に基づき、小規模事業者に寄り添った伴走型支援を引き続き推進していく。中小企業の国内外への販路拡大を後押しし、商談会、展示会の開催を通じて支援する。
 多くの企業で経営課題になっている人手不足についても対応する。新たに「人材確保・育成委員会」を設置、I・J・Uターンを含む人材確保の取り組みはもちろん、1億総活躍社会として女性や高齢者が企業で活躍できる場を作っていけるよう、環境整備や支援の取り組みを進める。

 4つ目は『企業を結ぶ』。会員数は減少傾向に歯止めがかかり、1万9220社に回復してきた。様々な業種、様々な企業が所属する総合経済団体としてのメリットを最大限に活かしながら多様な参画の場づくりを行い、会員企業間の交流、ビジネスチャンスの拡大や創出に向けて活発化させる。
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 新任副会頭の紫藤氏は実父も副会頭を2期経験しており、既に本人も商議所活動9期目を迎える。高向会頭の下で総務委員長、政策委員長を歴任。岩田新会頭をして「商工会議所活動を熟知、隅々までよく知っている人物」と言わしめている。紫藤氏は、「札幌の総合交通体系にとって運輸分野の視点は必要不可欠。また災害復興や環境面でも運輸分野は重要課題なので、本業の経験を活かしていきたい」と抱負を述べた。
 
 同じく新任副会頭に就いた柴田氏は、「経済にはいろんな要素がある。住みよい街づくりや食と観光の振興などにはいろんな産業が関わっている。私は様々な分野に挑戦してみたい。走りまわって汗をかく、小回りの利く役割を担えればと思っている」と述べた。
 
 退任した高向氏は、西尾長光会頭の急逝したことに伴い、副会頭から2004年6月に選任された。「『会頭になれ』と言われ準備不足のまま就任した。行動する商工会議所という標語を掲げてやってきたが、道産米を食べようというコメチェン運動や厚生年金会館払い下げ運動、新幹線開業と札幌延伸の運動など商工会議所の枠を超え、市民、道民を巻き込んで大運動にする手法でやってきた。それは政治、行政に大きな影響力があったと思う」と振り返った。また、岩田新会頭について、「岩田さんは、言うなれば豊平川の水で産湯を使った札幌生まれの札幌育ち。新しい商工会議所を作っていくと思う」と期待を示していた。
IMG_9571(写真中央は岩田会頭。左は新任副会頭の紫藤正行氏、右は同じく新任副会頭の柴田龍氏)


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