北海道・紋別の冬季観光のシンボルと言えば流氷砕氷船「ガリンコ号Ⅱ」。オホーツクに浮かぶ流氷を独特の形状をしたドリルで砕きながら進む姿は、流氷観光の醍醐味が味わえるため観光客の心を捉えてきた。そのガリンコ号Ⅱ(定員195人)ことⅡクンが、2020年のシーズン運航で役目を終え、新鋭のガリンコ号Ⅲにバトンタッチする。気になるのは、退役するⅡクンの行方。どうなるⅡクン。(写真は、海洋交流館の発着場に接岸しているⅡクン。夏場は釣りクルーズや花火観光船として活躍する)
(流氷観光の先鞭をつけた「ガリンコ号Ⅰ」は、海洋公園に屋外展示されている=写真)

 紋別で流氷観光船「ガリンコ号Ⅰ」が就航したのは、1986年の流氷シーズンから。三井造船が製造したアラスカ油田開発用の氷上移動船が役割を終え、紋別市が借り受けて観光旅客船に改造したものだ。

 97年1月、初代からⅡクンにバトンタッチして現在に至っているが、そのⅡクンも就航20年が経過してメンテナンスにも多額の費用がかかるようになった。エンジンはベンツ製で、部品交換はドイツから部品を取り寄せなければならない上、定期検査や中間検査では毎回金額が跳ね上がり、前回は3000万円、次回は5000万円の検査費用が必要とされている。

 さらに20年前の仕様のためバリアフリー化されておらず、使い勝手も現在にマッチしていない。このため、船を運航している市の第3セクター、オホーツク・ガリンコタワーはガリンコ号Ⅲの新建造が必要と考え、現在コンサル会社と共に速度アップや定員増、砕氷の仕組みなど基本設計を進めている段階。設計が固まり次第、来年度以降に市が造船会社に発注して建造、21年1月から運航を開始する計画になっている。

 Ⅲクンの登場は、もちろん注目を集めるだろう。だが、やはり気になるのは退役後のⅡクン。Ⅰクンは、ガリンコ号の発着場のある海洋公園に展示されて雄姿を披露しているが、Ⅱクンも同じように陸に上げて展示しようにも地盤の強化などに馬鹿にならない費用がかかる。

 オホーツク・ガリンコタワーの黒木主悦常務は、「まだ何も決まっていない」としながらも、「例えば北極海航路の沿岸国など氷が接岸する地域で、観光砕氷船として第2の人生を送れると嬉しいですね。貰い手が現れることを期待しています」と話す。紋別で活躍できるのは、残り19年と20年の流氷シーズンのみ。残り2シーズンでⅡクンは観光客にどんな物語を紡いでくれるだろうか。


5人の方がこの記事に「いいんでない!」と言っています。