一見、ごく普通のホテルのフロントカウンターに見えるが、実はこれ札幌軟石でできている。4月にオープンしたばかりの「東急ステイ札幌」(南1西1)が採用した軟石美のアクセントだ。石が放つシンプルな温かみがこのホテルのコンセプトを示しているようだ。IMG_2628(写真は、札幌軟石が使われている「東急ステイ札幌」のフロントカウンター)

 札幌軟石は、北海道開拓が始まった明治初期にいわゆるお雇い外国人によって今の南区石山で発見されたとされている。4万年前の支笏火砕流でできた溶結凝灰岩ということだが、丈夫で硬くて切り出しやすいことから、明治から昭和の初期まで札幌や小樽の建物に多く利用された。

 軟石づくりの建物として今も残っているのは、札幌市資料館(大通西13)や日本キリスト教団札幌教会(北1東1)など。東急ステイが札幌軟石を利用することにしたのは、建設を始めるにあたり現場を掘り返していた時に偶然土中から見つかったため。建設場所は、時間貸し駐車場として利用されていたのだが、その前はどのように利用されていたかハッキリしない。まして土中に軟石が埋められていた理由もよくわからないという。

 ただ、ホテルのある地域は札幌でも最初に賑わい始めた一番街商店街の近く。ホテル北側にある秋野総本店薬局は優に100年を超える老舗で、しかも蔵は軟石づくりで今も現役。ホテル敷地にも軟石づくりの建物があったことは容易に想像できる。

 ともあれ、東急ステイはこの軟石を過去からの贈り物として新築するホテルで再利用することにした。使用されている箇所は、フロントカウンターと各階のエレベーターホール。真新しい建材と土中に埋もれていた軟石が囁き合うような不思議な空間が生まれている。札幌軟石は、北海道遺産第3回選定候補にも挙がっている。歴史的な石材が新しい建物に物語を引き継いでいるかのようだ。


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