北海道における観光列車の可能性を討論するパネルディスカッションが22日、札幌市中央区の札幌国際ビル国際ホールで開催された。道南いさりび鉄道の「ながまれ海峡号」が2016年の鉄旅オブザイヤー(実行委主催)を受賞するなど北海道の観光列車が注目を集めている中だけに、定員100人の会場は満席だった。IMG_2072 (2)(写真は、観光列車の可能性を話し合ったパネルディスカッション。手前が北大副学長の吉見宏氏)

 パネルディスカッションは、北海道が主催して行われ、パネリストに札幌出身のフォトライター矢野直美氏、元RailMagazine編集長で日本鉄道保存協会顧問の名取紀之氏、伊豆急行企画部長の比企恒裕氏が出席して行われた。コーディネーターは、北海道大学副学長の吉見宏氏が務めた。
 
 比企氏は、伊豆急行が2月から走らせた地域プロモーション列車『リゾート21』について紹介、「1988年に製造された7両編成の列車を使って1両ずつ全6両を内装費持ちで沿線自治体に自由に使ってもらうようにしたもので、伊豆急と地域が一緒になって列車を作った。観光列車は、地域を売っていくには良いPR媒体。主役は、地域でありそこに住む人たち。鉄道は地域ごとのコンテンツを繋げていく役割がある」と観光列車の意義を強調した。
 
 名取氏は、「北海道で観光列車を走らせるには、極寒地仕様のディーゼルカーが必要で、中古をその仕様に改造するには新車をつくるほどのカネがかかる。如何に負担を少なくするかが課題」と話したうえで、「鉄道事業者は嫌がるが、ある区間だけゆっくり走ったり、途中で停車させることがあっても良い。こうした工夫はカネがかからないが、規制の緩和や例外措置が必要になってくる」と述べた。
 
 矢野氏は、「例えば新千歳空港から札幌を結ぶJR北海道の快速エアポートの車内アナウンスに北海道の言葉を入れても良いのでは。ハード面の整備だけでなくソフト面の工夫も大切。現在、全国には約100種類の観光列車が走っているが、新車は2~3種類で残りはいずれも中古列車の再利用。地元のベタなものを楽しんでもらうのが目的で、観光列車は豪華列車である必要はない」と語った。
 
 コーディネーターの吉見氏は、「観光列車は地域のショーウィンドーの役割を果たして地域を活性化する。本州の観光列車に乗っていると、通過する駅でも地元の人たちが手を振っており、車内アナウンスで『外に手を振ってください』と言っている。やはり地元のおもてなし、協力がないと長続きはしない。観光列車で地域を盛り上げていけばリピーターも必ずやってくるはず」と話していた。
 
 このパネルディスカッションは、北海道における観光列車運行の可能性について道が外部に調査を委託した結果報告を兼ねて実施。吉見氏を座長とする検討会議が5回開催されて実現の方向性などをまとめた。矢野氏はその会議の委員で、比企氏と名取氏は同会議の客員専門委員を務めた。


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