自治体や公共機関、民間企業などが持つ情報を広く集めたオープンデータを利用して観光やスポーツ大会、イベント、交通情報として提供する実証試験が札幌市で始まる。総務省のオープンデータ・ビッグデータ利活用推進事業を受託した日本マイクロソフト(本社・東京都港区)とYRPユビキタス・ネットワーキング研究所(東京都品川区)が、札幌市の全面協力の下で始めるもので、外国人観光客を対象にしたICT利用による「おもてなし」の進化に繋がると期待される。IMG_1169(写真は、インバウンド向けにオープンデータ利活用実証試験を発表した樋口泰行・日本マイクロソフト会長、秋元克広札幌市長、坂村健・YRPユビキタス・ネットワーキング研究所所長=左から)

 多方面から大量に集められたオープンデータを様々なアプリによって使い勝手良く加工し、リアルタイムでスマートフォンやタブレット端末で得られるようになれば、日本人だけでなく外国人観光客などの利便性が高まり、より快適に買い物やイベント、観光を楽しむことができるようになる。
 
 2020年の東京オリンピック・パラリンピック(以下、東京オリ・パラ)を控え、こうしたオープンデータの利活用は不可欠。今回の実証実験は、総務省の2015年度オープンデータ・ビッグデータ利活用推進事業「オープンデータシティの構築に向けた実証」(約4000万円)で、都市基盤が整備され観光や食でブランド力があり、外国人観光客が増えている札幌市が試験に最も相応しい都市として選択された。
 
 実証実験に先立ち、19日に日本マイクロソフト北海道支店(札幌市中央区北5西2、JRタワーオフィスプラザさっぽろ20階)で同社の樋口泰行代表執行役会長、ユビキタス研の坂村健所長、札幌市の秋元克広市長が出席して会見が行われた。
 市などは19日付でオープンデータの収集と利用環境を整備する目的で、市の観光コンベンション部やスポーツ部のほか公的機関や民間のバス事業者や商業者、IT企業など22団体で札幌オープンデータ協議会(会長・越塚登東京大学大学院情報学環教授)も立ち上げている。
 
 具体的には、オープンデータを利用した観光、スポーツイベント、交通情報、飲食情報などがスマホで簡単に得られるアプリ「ココシル」(ユビキタス研究所が開発、6ヵ国語に対応)を「FISジャンプワールドカップ2016札幌大会」(1月30~31日開催)、「さっぽろ雪まつり」(2月5~11日開催)に訪れた外国人観光客にダウンロードして利用してもらう。
 ジャンプ台周辺や雪まつり会場のほか観光地などに自動的に案内を発信するビーコンを設置、ジャンプ大会では選手や大会情報、ジャンプ台の構造、ルールなども分かるような情報を流す。また、市電の運行情報、観光バスの集合場所なども分かるようにする。
 3月末までに利用者の反応を検証したうえで17年の冬季アジア札幌大会、20年の東京オリ・パラに向け外国人観光客の受け入れ環境を整えるモデルケースを構築していく。
 
「ココシル」は、今回のオープンデータ利用アプリの代表格として提供するが、オープンデータが利用しやすいIT環境を日本マイクロソフトとユビキタス研は整えており、IT事業者は簡単に無償でオープンデータを利用して専門アプリを作ることもできる。
 
 樋口会長は、「どこの自治体も急増するインバウンドの受け入れ態勢整備が急務になっている。WiFi、多言語対応などがあるが、オープンデータを利用したICTによるおもてなしの仕組みづくりが重要だ」と述べ、坂村所長は、「東京オリ・パラに向けて外国人観光客のおもてなし向上にはオープンデータの活用が必要だが、東京は公共交通機関など多くが民営化され、すべての意を取るのは大変。実証にはある程度の都市基盤がないといけないが、札幌は地下鉄や市電などを市が運営しており試験をしやすい地域。札幌でうまくいかなかったら東京でうまく行くわけがないので、ぜひ成功させたい」と話した。
 また、全面協力する秋元市長は、「札幌の魅力と民間事業者が持っているアイデア、ICTを掛けあわせた新しい事業で札幌の滞在を楽しんでいただくことに繋がれば良いと思う」と期待感を示した。
 

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