IMG_9142 東京証券取引所の「東京プロマーケット」に新規上場したシステム企業、イー・カムトゥルー(本社・札幌市中央区)。シンガポールを拠点にフランチャンズ展開を行っている外資企業とも提携、アジア戦略も着々と前進している。インタビューの2回目は上田正巳社長にイー・カムトゥルーの成長戦略とともに北海道のIPO(新規株式公開)事情などを聞いた。(写真は、上田正巳社長)
 
 ――東京プロマーケットの株式売買はどのように行われているのですか。
 
 上田 在外法人、在外個人の売買は可能で、国内では証券会社が認めた特定投資家などが売買できます。特定投資家とは、証券会社が認定する投資家で、当社の上場を担当したフィリップス証券では法人だと預託金100万円か100万円相当の株を預託すれば特定投資家として認められるようです。個人ではもう少しハードルは高いかもしれません。この特定投資家制度を採用しているのは国内では野村証券とフィリップス証券だけ。もう一つ、上場法人は特定投資家にあたり売買できます。
 
 ――前12月期決算の状況はどうですか。
 
 上田 2014年12月期決算は、売上高が3億円を超えますが、上場費用がかかるため減益になります。経常利益ベースでは1000万円を切って600万円ほどの見通し。15年12月期は、売上げ、利益ともにアップしていきます。現在の従業員数は、23人ですが、今後も人数はあまり増やす気はありません。
 
 ――シンガポールの現地法人を拠点にアジア展開も期待できますね。
 
 上田 このほどシンガポールを拠点にアジア全域へのフランチャイズ展開支援を行っているFTコンサルティングの日本法人「FTコンサルティングジャパン」(本社・大阪市中央区)と業務提携しました。この企業の既存、新規顧客に当社のクラウド型店舗管理システムやPOS端末の提供を行っていきます。また、国内の外食チェーンなどがアジアに進出する場合のサポートもこの企業と共同で実施していきます。華僑資本とタッグを組むことによって市場を広げていくことも考えています。
 
 ――上場市場のステップアップも視野に入っていますか。
 
 上田 東京プロマーケットに上場したのは、次のステージに登るためのステップと考えています。株式に流動性を持たせるため早期に札証アンビシャス市場に上場したい。予想以上にプロマーケットの上場効果が出てきたら東証マザーズを目指します。
 
 ――道内企業のIPO(新規株式公開)はペースが鈍いようです。現状をどう見ていますか。
 
 上田 ある意味で当社の責任は重いと感じています。当社が札証アンビシャス市場にステップアップすればIPOを目指す道内企業は増えるのではないか。最初からアンビシャスやマザーズに上場できる企業はそんなに多くないので、プロマーケットをステップアップ市場として使えることを当社が示すことが鍵を握るのでないかと考えているからです。現在、プロマーケットには10社が上場していますが、まだステップアップした企業はありません。当社が1社目として流動性のある市場にステップアップすれば、「こんなルートもあるのか」と上場を目指す企業は増えてくる可能性がありますね。
 
 ――本日は、ありがとうございました。
 
《うえだ・まさみ》1965年生まれ、札幌西高、北海学園法学部卒。88年2月、卒業を待たずに財界さっぽろ入社、卒業式には会社から出席したという。在職中は記者の傍ら、上勇会と名付けた異業種交流会を立ち上げ、会員の中からタスコシステム、メディカルサポートの2社が上場。それを聞きつけた野村証券幹部が上田氏の元を訪れた逸話もある。2000年5月に退社して同年同月にイー・カムトゥルー設立。当初は高田屋などをチェーン展開するタスコシステム向けの売上げ管理システムが中心だったが、その後タスコシステムと路線対立から決別。株主構成の見直しや売上げの大幅ダウンという経営危機も経験している。
 社名の由来について聞くと、「2000年のころ、システム会社では“イー”を冠にした企業が多かったので、『あなたのイーにまつわる夢を実現します』という思いで名付けました」と照れくさそうに笑った。



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